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建築設計事務所の仕事の様子と雑談を綴っています。


by 徳田直之 (Naoyuki Tokuda)
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2020年プリツカー賞を受賞した「グラフトンアーキテクツ」について

グラフトンアーキテクツの受賞を受けて、アーキデイリーが経歴をまとめていた。
この中で、彼女たちの思想を反映する言葉を紹介されていた。

グローバリゼーションが「何かを征服する、または自分の存在をどこかで主張する」ことではなく、「見つけた何かに貢献することは良いことだ」と理解しています。

彼女らの作品を見ているとその言葉がしっかりと建築として表現されているように感じる。



そう、彼女たちはその力強い形の根底には、その土着を丁寧に観察し捉え形にしていこうという意思が流れている。
だからか、押しつけがましくない建築を感じられる。教育施設を多く手掛ける彼女達にとってこの思想へ到達するのは自然のことだったのかもしれない。
何かを教えるのではなく、何からも教わる姿勢が様々な場所で受け入れられた。




そこで、完全な妄想だが、作品を見ていくうちに、グラフトンアーキテクツにとってトリニティカレッジPhase1が大きな変化を与えていったように思われた。
90年代の作品には岩のような強さはまだなく、近年の作品より軽い印象を受ける。
トリニティカレッジで既存の重たい大学との接続や対峙について向き合った。大きくはないが、時間・空間・既存のとの関わり方、すべての要素が入ってくるようなプロジェクト。どこにいてもぶれない思想がこの作品と次期に養われ、世界でつくる土台固めになったように感じた。


インディーズがメジャーにな生まれ変わる瞬間に面白い曲を出すバンドのように、グラフトンアーキテクツはここで脱皮した。
どの世界的な建築家もその転換点となる作品はある。それは有名な場合もあるけど、そこまでヒューチャーされないこともある。
建築家がその自身のホームページでそこまで大事に見えないプロジェクトを掲載しているとき、もしかしたら、その建築にはその建築家の密かな思いが隠れていることがあるのかもしれない。






by tokup_nao | 2020-03-09 20:39 | 建築 | Trackback | Comments(0)