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建築設計事務所の仕事の様子と雑談を綴っています。


by 徳田直之 (Naoyuki Tokuda)
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卒業設計のテーマの見つけ方!

卒業制作 卒業設計 テーマ 見つからない 建築 コンセプト

という検索ワードを打って僕のブログに流れ着く建築系漂流キッズがいるようなので、ここで改めて卒業設計のテーマの見つけ方を整理しておきましょう!
僕自身もとても悩んだ、しかし当時は検索してもいいものがヒットしなく、月日だけがむなしく過ぎた覚えがあります。
過去の自分に向けて書きます。笑

まず、大きく分けて卒業設計のテーマの見つけ方は3つあります!



①、問題をみつける
まず、問題を見つければ「それを解決するために建築をつくります!」と言える。
これは、どの先生が聞いてもとてもわかりやすいアプローチです。
その問題は大きく分けて二つあります。

■社会的問題
ニュースを聞けばいくらでも社会的問題は出てきます。3.11や築地移転問題、地球温暖化、ゴミ問題、高齢化、出生率の低下、保育園不足、満員電車。
僕が当時面白いなと思ったテーマは電車の落し物について、卒業設計をやっていた同じ研究室の人。問題の視点がおもしろいければ、おもしろいアプローチができる。ただ、難しい問題ほど建築へのアウトプットは難しくなる。それは自分の設計能力が客観的にわかっているかのバランス力も試されると思います。

■個人的問題
これは、私小説的と言われるやすいもので、アーティスト思考で自分をさらけ出す人に向いている気がする。
住宅を卒業設計にしたい場合は個人的問題から始まる傾向が強い。もちろん、社会問題としても扱えるが。社会的問題とは対極的に、社会に開かない閉じた設計で終始することが必要かもしれない。閉じ続けて空間を吐き出した結果、私みたいなのが現代です!といって社会問題に反転させることも可能かもしれない。
中途半端に物語を語ろうとするとスベる可能性もあるので、突き抜け感が必要でしょう。


②、場所をみつける
一生懸命問題も見つけようとする人がいる一方、面白い場所を見つけてそれに呼応するように建築をつくることで、さくっといいものを作り上げてしまう人もいます。それは、問題を乗り越える労力がない分、おもしろい空間づくりに終始できるというメリットがあるのでしょう。ただ、社会に対する批評性は薄くなります。
海、山、川、地元。好きな場所をみつけてみましょう。あなたが今まで生きてきた中で、面白かった場所、記憶に残っている場所はどこですか?
その場所に社会的問題がある場合はいい踏み台にできるかもしれません。
僕の同期に大阪のあいりん地区を選んでる人がいました。それはまさにこのタイプ。


③、人をみつける
これは、一応三つと言ったので、無理やり三つ目を入れました。笑
稀なケースですが、なくはないと思い追加しました。
問題や場所から建物をつくる一方で、ある人の一生や、行動から建物をつくるのも可能だなと思います。
たとえば、ヘレンケラーの住宅、だとか。
ある特定期間存在した民族のための住宅のだとか。
憧れの人、死んでしまったあの人、理想の人、好きな建築家。
人ではなく、ものからつくることも考えられます。「もの」から発送すると修士設計っぽくなりそうですが、ある先輩は修士で音楽から建築を作ってました。



以上、手短でしたが卒業設計のテーマの探し方でした。
最後に!
今回紹介した3つはもちろんそれぞれをブレンドしてもいいと思います。
ある人の場所の問題から、私小説を展開する。など。

よい問はよい答えを生む。

ブログをさかのぼると出てきますが、僕は以下のようなアプローチでした。

学部のときは
渋谷のスクランブルで刑務所。→場所をみつけ、そこで社会問題を考える。

修士設計のときは
篠原一男をテーマに地元で提案を行いました。(part1,part2,part3)→人と場所を見つける。

学部のときは場所や社会問題が濃いものを選びました。このときの反省は、場所も問題も味付けがかなり濃かったので、見た人が空間よりも場所や問題の方に関心が向くということでした。
修士のときは学部のときの反省から、空間が主題になるように社会問題は全く取り上げずに、作家論や空間を前面に出すようにしました。
自ずと、修士の方が評価がついてきました。

五十嵐太郎の卒業設計が国会の隣に原子力発電所を作るというものでした。そんなに安全というなら、国家の隣につくります!というアプローチで、とてもアイロニーな五十嵐太郎らしい作品ですね。僕も学生の時それを知ったときは衝撃を受けました。しかし、もしあなたが空間を主題としたければ五十嵐さんみたいなアプローチではないと思います。

僕は学部のときは社会的批評性があるものを作りたい!と思ってやってはいましたが、やはり対外的な評価や就職活動を考えるとあまりウケません。正直、仙台でも空間が面白いものが評価されると思います。
でも、あのとき評価は考えず自分なりに一生懸命やった刑務所はそれなりに楽しかったです。

あなたが卒業設計をどういう位置付けで捉えるかは自由だと思うので、徹底的にやればどんなかたちでも後悔はないと思います。
ただ、やればやるほど評価されないのは悔しいけどね。笑
でもその悔しさが大きければ大きいほど次のステップのときに大ジャンプとなるはずです。

恐らく、だいたいの卒業設計は今日説明した分類方法で説明できると思います。自分を客観視する参考として頂ければと思います。

もう、間に合わないよ。と思ってるあなた。

いやいや!
まだまだこれからだから!
悩んだその時間も必要だったのよ!

思いつけば、デザインは一瞬。

がんばって下さい~!



<2024/04/01 追記>

テーマの見つけ方!ではないけど、
他の時間がない時の進め方があります。

それはとても単純なアプローチで、形から入る。
面白そうな形を持ってきて、その中に機能をぶち込んで、それに合う場所にセットするというやり方。
実は、この方法は王道とは真逆のプロセスになるけど、実は形から入っているので面白い建築になりやすいということがあります。
問題意識や場所から見つけて、それを形に落とし込むとなると、実はみんな現実の壁にぶつかって形が萎みやすくなるもの。
形から入ると、建築の面白い鮮度を保ったまま最後まで落とし込めるのではないでしょうか。
よく考えたら、この形から入るプロセスで評価されている卒業設計がほんとに多いのではないでしょうか。
時間がない!でも面白いものを作りたい!という方はこの方法で突破するしかない。

よくよく考えたら私の修士設計は形から入っていました。
篠原一男という切り口であったものの、最後は長方形を組み合わせた形のパターンをいくつか出して、それを丁度いい建築のスケールに拡大したりして、
あとは、地元の丁度良い敷地を切り抜いて、その場所に合いそうなプログラムをぶち込む。
結局、この方法が一番早いし、出来たものが自然に納まっているのでした。しかも形が面白い。

卒業設計では形が面白ければ、そこに付随する問題やプログラムは弱くても意外と評価されてしまいます。
逆に言えば、形が面白くなければいくら問題意識が良くてプログラムも面白くても評価しにくいのです。

そのことをわかっているかどうかの差は大きいと思います。

質問があればコメント欄でお気軽に書き込みください!
ファイト。


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by tokup_nao | 2018-10-23 13:30 | コラム | Trackback | Comments(0)