建築とピアノ

「トッーン!」

久しぶりに実家の鍵盤を叩いてみる。
これ、建築だな。。
一度そう思ったら止まらない。

建物を設計するとき、大きく分けると新築物件と改修物件に分かれる。

新築物件はピアノ選びから始まり、自分が作る曲にあう音が出るピアノを選ぶことができる。

しかし、改修物件となると突然アプローチが全く変わってしまう。180度違う。いやもう、3回転半くらい違う。思考のトリプルアクセルが必要。

まずは、ぼろぼろのピアノの前に立たされて、「先生!こちらで演奏お願いします!スケジュールも予算もビリビリだけど、今回もまた一つお願いしますよ!」てな具合でキックオフ。
もちろん、これはガタが来過ぎててもう使うのも如何なものかと思ってても、思い出の詰まったそのピアノの前でそんなことは言えるわけもなく、
「ええ!やれるだけのことはやってみます!ええ!はい!よっしゃ!」ともう、ほとんど自分を奮い立たせるように返事をして始めていく。
「オリャー!」といって、いざピアノの蓋を開けてみると、中はひどい有様になっていることもしばしば。
改修物件あるあるで、壁や天井を壊し始めると、中の悲惨な状況がはじめてそこでわかることがある。
白蟻に喰われていたり、アスベストが混入されていたり、水漏れしてたり、ここまで来たらもうビックリドッキリ玉手箱。
「うん、そう、こんなのは・・、ね! よくあることですよ!はは。任せて下さい!」
といいつつ、心の中はドキドキ。頭の中では、ぐるぐると総予算の再計算が繰り広げられる。ハゲちゃうよー。

それとは逆に、外見はボロボロで埃を被っててこれはと思いつつ蓋を開けたら、意外と優秀な子もいたりする。このときはラッキー。

でもほとんどの案件は予算内で最大限の効果を得られるところを狙って、ピアノの音が良くなるように修理していくしかない。ここの鍵盤はあきらめて、この範囲の音階だけでいけそうな曲で勝負しよう!と腹を括ったりもすることもしばしば。それは諦めではなく戦略なのです。
それぞれの音をチューニングすることは、建築の内外の環境を素材や窓の設えを選定して整えていくことに似ている。環境をチューニング。

何とか、なんとか自分らしい曲に寄せていって、お客さんに心地よい音を探し求めて、軽症を負いつつ演奏をやり切るのだ。
とにかく、走りきれ。走り切ったらきっと見つかる!

直すことを諦めたところを諦めたように見せないようにしていくこと。設計しないとこを選ぶ行為そのものも設計ではなかろうか。

建築をピアノに例えると、少しだけ改修と仲良くなれる気がするのでした。

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by tokup_nao | 2018-04-09 00:00 | コラム | Trackback | Comments(0)
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by 徳田直之 (Naoyuki Tokuda)

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