tkc2011 二つの未完
2011年 03月 02日
この度、トウキョウ建築コレクション2011で修士設計として出展しました。
お時間のある方は足を運んでください。
楽しそうな修士設計・論文が沢山集まっています。
トウキョウ建築コレクション2011
日時|
展示 3月1日(火)〜3月6日(日) 11:00—19:00(初日は14:00から、最終日は17:00まで)
公開審査会 3月5日(土) 10:30〜19:00
場所|
展示 代官山ヒルサイドテラス・ヒルサイドフォーラム(〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町29-10)
公開審査会 代官山ヒルサイドテラス・ヒルサイドプラザ(〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町29-10)
コメンテーター(敬称略50音順)|
伊東 豊雄/いとう・とよお
大野 秀敏/おおの・ひでとし
手塚 貴晴/てづか・たかはる
長谷川 逸子/はせがわ・いつこ
古谷 誠章/ふるや・のぶあき
山本 理顕/やまもと・りけん
六鹿 正治/ろくしか・まさはる
前回のつづきより
篠原一男にとって「未完の空間」は二つ上げられる。
一つ目が篠原一男の「未完の家」(1970)
なぜ未完の家という名前だったのか。入江経一さんはある講演会でこんなことを漏らしていた。
「そのとき、篠原先生は脊髄の病気を患っていた。重い病気らしく、この家が未完成で終わるかもしれない。がしかし、家は完成したのだった。」
生死の淵をさまよいながら住宅を設計した篠原一男。
そこには明らかに、それまでの作品と異なるものが空間が出現した。
人気がなく、得体の知れないものによって漂白された室内。
多木浩二が写真を頼まれた。それまでの写真では表現できないその空間に困惑した。
新建築には異様なくらいに場所がわからない写真が登載された。
恐らく、篠原一男のような設計を本当にしようとすると、普通の人間では精神がおかしくなってしまうのではないかと思う。そのぐらいにギリギリのところまで追い込んで空間を吐き出していた。
ある施主曰く。
「篠原さんは、部屋に入るなり電気を消した。そして、小さな電気スタンドをカチっと付けた。それから、会話が始まった。」
ここまでくると、あっちの世界に片足を突っ込んでいたのではないかとさえ思って来る。そのぐらい徹底して光と闇について考えられていたとも言えるが。
でも、そんな篠原一男でも大きな失敗をした作品がある。それが、群馬県松戸市にある日本浮世絵博物館(1982年)であった。この作品は不思議なことに作品集には載っていない。東工大の百年記念館が議論に上がることはあっても、この作品はみんな話題には上げない。
初期のころは伝統から日本の住宅を考えていた、それが中期では抽象的なボックスになり、後期のデコンの時期には複数の形を統合するようになり、またその後は少ない数の抽象的な形を扱うようになる。浮世絵美術館はそのデコンの後の時期に当たる。そもそも、伝統から出発していた篠原一男にとって、晩年にまた日本の伝統的で代表的な「浮世絵」を扱うのはしんどいものがあったのではないかと思う。また、今まで篠原一男の扱う言葉はすべて抽象的な次元に抑えられていた。芸術、伝統、無機能、カオス、都市、通り、亀裂などなど。そこで、この「浮世絵」のような具象的なものを扱うのは初めての作業であったのだ。スケッチのスタディを見る限りでは、最初は平面図を浮世絵のように扱っており、結局最後には立面に対して絵を描くように設計されたようにみえる。
完成した浮世絵美術館を訪れると、残念なことに内部と外部には大きなかい離があった。いやそもそも建築のコンセプトそものがよくわからなかった。コンクリート面とガラス面を同一面で仕上げることは、当時では斬新なことであったのかもしれない。でも、それが鑑賞する空間とは何も関係がないものであることが残念であった。もちろん、「残念であった。」で終わらすのは何も意味がない。僕らはここで、じゃあそのとき篠原一男はどうするべきであったかを考えたい。
ここに、二つ目の「未完の空間」があった。
もっと時間があればこの二つの「未完」を対比的にうまく取り入れたかった。
良いところを取り入れることと、悪いところを指摘してそれを修正して取り入れる。この二つの作業もっと意識するべきであった。建築に訪れてもそうでありたい。褒めるだけじゃなくて、いけないところを見つけて、じゃあどうするべきであったかを自問自答したい。そうすると、相互に次のステップに進むことが出来る。批評される側にとって褒められることほど退屈なことない。
ヒントがほしいと思っていると、答えが思いつくかも・・・。
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cheder-cheese at 2011-03-03 07:50
足を運ぶことは出来ないけど、うまく行くことを願ってるよ。こっちのことはとりあえず任されたから、心配せずにがんばれ!!
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tokup_nao at 2011-03-03 12:40
さんきゅ。そっちは完全に任せたよ。
心置きなく等身大の自分をぶちかましてやるさ。
心置きなく等身大の自分をぶちかましてやるさ。
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山田孝延
at 2015-05-05 11:18
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「不思議なことに作品集には載っていない」
新建築で発表されましたし、篠原さんが自ら全力を挙げてまとめた作品集「篠原一男」/TOTO出版、の<第三の様式>に分類されて載っています。未完じゃないです。
新建築で発表されましたし、篠原さんが自ら全力を挙げてまとめた作品集「篠原一男」/TOTO出版、の<第三の様式>に分類されて載っています。未完じゃないです。
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tokup_nao at 2016-09-19 21:33
by tokup_nao
| 2011-03-02 16:50
| 建築設計
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Comments(4)